認知症になった親の代わりに不動産の売却を行うには?
高齢化社会が深刻化している昨今、65歳以上の方の7人に1人が認知症を発症しているというデータもあるほど、認知症が身近な病気となっています。認知症などにより判断能力が不十分となってしまうと、不動産売却などの法律行為が認められなくなってしまいます。もし、ひとりで暮らしている親が認知症になったら、もし、不動産をたくさん保有している方が認知症になったら、ご自宅や不動産の売却はどうしたら良いのでしょうか?
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福留 正明
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目次
1.親名義の自宅は勝手に売却できない
不動産の売却は、名義人本人が売却を行うまたは本人の同意を得て売却を行う必要があります。
家族であっても名義人でない場合には売却することは出来ません。
仮に、名義を変更してから売却を行うという方法を選択する場合にも、親から子への売買もしくは贈与という形で契約を行う必要があります。
認知症を発症してしまうと契約などの法律行為が認められない可能性があります。
これは、判断能力が十分ではない状態によって騙されたりすることを防ぐためです。
もし、認知症を発症してしまった後に自宅など不動産を売却する場合には、成年後見制度を利用することで売却することが可能になります。
2.成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症に限らず障害等によってご自身で判断する能力が十分ではない状態の場合に、契約等の法定行為や財産管理などの支援を行うための制度です。
成年後見制度には法定後見制度と任意後見制度の2つが存在します。
すでに認知症を発症してしまっている場合には法定後見制度を利用することになります。
今後のことを考えて後見制度を利用したいとお考えの場合には任意後見制度を利用することになります。
それぞれの特長と手続きの方法を確認しておきましょう。
2-1:法定後見制度
法定後見制度はすでに本人の判断能力が十分ではない状態であり、契約等の法定行為や財産管理が行えない場合に家庭裁判所が本人に変わって法定行為や財産管理を行う代理人を選任する制度です。
本人の判断能力の状況によって「後見」「補佐」「補助」の3つの類型に分かれています。3つの類型の中で「後見」が最も判断能力がない状態の方の支援という形になります。
(1)法定後見人になれない人
法定後見人は親族が後見人となることも可能ですが、トラブル等になる可能性もあるため、弁護士や司法書士、社会福祉士などが選任されるケースが多いです。
法定後見人になれない人は以下に該当する人です。
(2)法定後見制度の手続き
成年後見業務が終了(支援されている人が亡くなった場合など)した場合には、家庭裁判所へ報告書と財産目録を提出し終了の登記を行います。管理していた財産等を引渡し、後見業務は終了となります。
2-2:任意後見制度
任意後見制度は、現段階ではまだ元気で判断能力もある方が将来、判断能力が不十分になったときのことを
考えて支援してくれる人をご自身で選任し契約する制度です。
(1)任意後見人になれない人
任意後見人はご自身で選任する人となりますが、以下に該当する人には依頼することが出来ません。
(2)任意後見制度の手続き
任意後見制度の終了も法定後見人制度と同様に、家庭裁判所へ報告書と財産目録を提出します。
2-3:成年後見制度の申立に必要な書類
成年後見制度の申立を行う際には、支援される人の住所地を管轄する家庭裁判所への申立が必要となります。
その際に必要な書類は以下の通りです。
法定後見人の候補者がいる場合、任意後見人の申立を行う場合には、後見人となる方の戸籍謄本・住民票・登記事項証明書・身分証明書が必要です。
3.成年後見人による不動産の売却
後見が開始した場合には、成年後見人が被後見人に変わって不動産売却等を行うことが可能になります。
とはいえ、もし、売却を検討している不動産が被後見人の居住用不動産であった場合には、簡単に売却を行うことが出来ません。被後見人の居住用不動産を売却する場合には家庭裁判所の許可が必要となります。被後見人にとって売却が必要であると家庭裁判所が認めない限り売却することができません。
居住用以外の不動産の場合にも、取引が高額になることから裁判所に相談するようにしましょう。
裁判所の許可が無い場合の売買契約は無効となります。
被後見人の不動産の売却や賃貸、賃貸借解除、抵当権設定などはすべて家庭裁判所の許可を得る必要がありますので注意してください。
まとめ
不動産の売却は名義人がご自身で行う必要があります。ご家族が認知症を発症してしまい、どうしてもご自身で売却等の契約行為を行うことが出来ない状態にある場合には成年後見制度を利用することになりますが、成年後見人であっても、居住用不動産の売却等は家庭裁判所の許可が必要となります。
不動産などの資産を複数所有している場合には、先々のことを考えて予め売却を検討する、贈与を行うなどの対策を取っておくことが大切です。
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