長期優良住宅のメリットとは?補助金から減税制度までプロが徹底解説
「マイホームを建てたいんだけど、長期優良住宅にした方がいいのかな?」
「長期優良住宅ってどんなメリットがあるんだろう?」
長期優良住宅についてこんな疑問を持っていらっしゃる方は多いでしょう。
長期優良住宅とは、国が認めた長期間にわたって安心して住み続けられる質の高い住宅のことをいいます。
国が定めた基準を満たして長期優良住宅として認定されると、補助金がもらえる、税金が軽減されるなどのメリットがあります。
長期優良住宅は、質の高いマイホームをお得に建てたい方にとっては見逃せない制度だといえるでしょう。
目次
1.長期優良住宅とはいったいどんな制度?
長期優良住宅制度は、2009年に始まった長い期間安心して住むことのできる住宅に対する認定制度です。
長期優良住宅として認定されると、補助金がもらえる、税負担が軽減されるなどさまざまなメリットがあります。
長期優良住宅の認定基準は次のようになっています。
- (1)住宅の構造および設備について長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられていること。
- (2)住宅の面積が良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
- (3)地域の居住環境の維持・向上に配慮されたものであること。
- (4)維持保全計画が適切なものであること。
- (5)自然災害による被害の発生の防止、軽減に配慮がされたものであること。
「これだけ並べられても難しくよく分からないなあ……具体的にはどのような基準を満たせば良いんだろう?」
と混乱してしまいますよね。
詳細な認定基準は、新築住宅か増築・改築を行った住宅かによって異なります。
例として新築住宅の場合の10個の認定基準を確認してみましょう。
- ・劣化対策……数世代にわたり住宅の構造躯体が使用できること。
- ・耐震性……極めて稀に発生する地震に対し、継続利用のための改修の容易化を図るため、損傷のレベルの低減を図ること。
- ・維持管理・更新の容易性……構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備について、維持管理(清掃・点検・補修・更新)を容易に行うために必要な措置が講じられていること。
- ・省エネルギー対策……必要な断熱性能等の省エネルギー性能が確保されていること。
- ・住戸面積……良好な居住水準を確保するために必要な規模を有すること。
- ・居住環境への配慮……良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること。
- ・維持保全計画……建築時から将来を見据えて、定期的な点検・補修等に関する計画が策定されていること。
- ・可変性(共同住宅・長屋のみ)……居住者のライフスタイルの変化等に応じて間取りの変更が可能な措置が講じられていること。
- ・バリアフリー性(共同住宅等のみ)……将来のバリアフリー改修に対応できるよう共用廊下等に必要なスペースが確保されていること。
- ・災害配慮……自然災害による被害の発生の防止又は軽減に配慮されたものであること。
このように、長期優良住宅として認められるためにはさまざまな観点から長く快適に暮らせる家であることを証明する必要があるのですね。
2.長期優良住宅のメリット!補助金・減税制度を活用しよう
「長期優良住宅として認められるとどんなメリットがあるんだろう?
というのが多くの方の気になるポイントではないでしょうか?
そこで、ここからは長期優良住宅のさまざまなメリットを詳しく見ていきましょう。
あわせて、長期優良住宅を建てることで活用できるお得な制度についてもご説明していきますね。
2-1.安全性が高い
住宅を建てる上で安全性や快適性は非常に重要なポイントですよね。
長期優良住宅は長きにわたって暮らせるよう、高い耐震基準を満たしていることや劣化しづらい構造で建てられていることなどが求められています。
そのため、安心して住める家だといえるでしょう。
地震による被害や劣化を心配せずに長期的に暮らすことができるというのは大きなメリットですよね。
2-2.補助金を受け取ることができる
安全性や堅牢性に万全を期した住宅は、それだけ建築コストがかかってしまうことが考えられますよね。
しかし、長期優良住宅を建てる場合には要件を満たせば補助金を受け取ることができます。
木造の長期優良住宅を新築するなら、「地域型住宅グリーン化事業」の補助金最大110万円を受け取ることができるかもしれません。
さらに、キッチン、浴室、トイレ、玄関のいずれか2つ以上を複数の箇所に設置する住宅であれば、最大30万円が上乗せされる可能性があります。
また、中古の住宅を長期優良住宅へとリフォームするための工事には、「長期優良住宅化リフォーム推進事業」の補助金最大210万円を受け取ることができますよ。
2-3.税金の負担が減る
「家を建てるときって、いろんな税金がかかるって聞いたけど……」
と気になっていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
一般的に住宅を新築したり購入したりする場合には以下のような税金がかかります。
- ・印紙税……契約書などにかかる税金
- ・登録免許税……土地や住宅の登記にかかる税金
- ・不動産取得税……不動産を新しく手に入れたときにかかる税金
- ・消費税……建物に対してのみかかる。
また、不動産を所有している間固定資産税が課税されることは皆さんもご存知でしょう。
しかし、長期優良住宅であれば、税金の負担を減らすことができるのです。
長期優良住宅を購入すると、以下の税金の負担が軽減されます。
2-3-1.所得税の控除を受けられる
住宅ローンを借りている場合には所得税で「住宅ローン控除」を受けることができます。
長期優良住宅を購入すると住宅ローン控除の対象となる額の上限が増えるため、税金を節約できるのです。
区分 | 住宅の環境性能等 | 令和6年入居 | 令和7年入居 | 控除期間 |
---|---|---|---|---|
新築住宅 買取再販 |
長期優良住宅・低炭素住宅 | 子育て世帯・若者夫婦世帯:5,000万円 その他の世帯:4,500万円 |
4,500万円 | 13年 |
ZEH水準省エネ住宅 | 子育て世帯・若者夫婦世帯:4,500万円 その他の世帯:3,500万円 |
3,500万円 | 13年 | |
省エネ基準適合住宅 | 子育て世帯・若者夫婦世帯:4,000万円 その他の世帯:3,000万円 |
3,000万円 | 13年 | |
その他の住宅 | 0円 | 0円 | – | |
既存住宅 | 長期優良住宅・低炭素住宅 ZEH水準省エネ住宅 省エネ基準適合住宅 |
3,000万円 | 3,000万円 | 10年 |
その他の住宅 | 2,000万円 | 2,000万円 | 10年 |
したがって、長期優良住宅であれば最大で年間35万円の控除を13年間受けることができます。
また、長期優良住宅をローンではなく現金で購入する場合には「投資型減税」を利用することもできます。
通常の住宅を自己資金のみで購入する場合、「投資型減税」は適用されません。
しかし、長期優良住宅・低炭素住宅・ZEH水準省エネ住宅を自己資金で購入する場合には、性能強化に必要と考えられる費用の10%が1年間控除されます。
2-3-2.登録免許税の税率が引き下げられる
登録免許税とは、不動産登記をする際に支払わなければいけない税金です。
長期優良住宅は、一般の住宅よりも登録免許税の税率が低くなります。
所有権保存登記(新築物件の場合) | 所有権移転登記(中古物件の場合) | ||
---|---|---|---|
一般住宅 | 不動産価額の0.15% | 不動産価額の0.3% | |
長期優良住宅 | 一戸建て | 不動産価額の0.1% | 不動産価額の0.2% |
マンション | 不動産価額の0.1% | 不動産価額の0.1% |
なお、この税率が適用されるのは令和9年3月31日までとなっています。
2-3-3.不動産取得税の控除額が増える
長期優良住宅は、不動産取得税も減税されます。
不動産取得税は、その不動産の価値を示す「固定資産税評価額」に税率をかけることで求められます。
税率は令和9年3月31日までは3%となっています。
ただし、一般住宅と長期優良住宅はそれぞれ以下の金額を、課税の対象となる固定資産税評価額から、控除することができるのです。
一般住宅 | 1,200万円 |
---|---|
長期優良住宅 | 1,300万円 |
例えば固定資産税評価額が1,500万円の物件であれば、不動産取得税は次のように計算できます。
一般住宅……(1,500万円−1,200万円)×3%=9万円
長期優良住宅……(1,500万円−1,300万円)×3%=6万円
2-3-4.固定資産税の減税期間が延長される
長期優良住宅を新築すると固定資産税の減税期間が延長されるのもメリットの一つです。
不動産を所持していると固定資産税を支払う必要があることは皆さんご存知でしょう。
実は、住宅を新築した場合、固定資産税は3年間にわたって減税されるという制度が設けられています。
この減税期間が延長されるのです。
令和8年3月31日までに長期優良住宅を建てた場合には一定期間固定資産税が半額になる制度が導入されています。
建物の条件 | 減税される範囲 | 減税期間 | |
---|---|---|---|
一般の住宅 | 120㎡以下の場合 | 1/2 | 新築後5年間 |
120㎡を超え280㎡以下の場合 | 120㎡までは2分の1 (残りの部分は減税なし) |
||
マンション | 120㎡以下の場合 | 1/2 | 新築後7年間 |
120㎡を超え280㎡以下の場合 | 120㎡までは2分の1 (残りの部分は減税なし) |
2-4.お得な住宅ローンを利用できる
さらに、長期優良住宅を購入する場合、低い金利の住宅ローンが利用できるケースがあります。
全期間固定金利の住宅ローン「フラット35」では、長期優良住宅を購入する場合には金利が優遇される仕組みになっています。
長期優良住宅の購入者は、フラット35のなかでも金利がお得な「フラット35S金利Aプラン」という住宅ローンを借りることができます。
このプランでは、5年間にわたってフラット35の金利から0.5%を引いたお得な金利が適用されるのです。
さらに、長期優良住宅であれば、「フラット50」という50年間固定金利の住宅ローンを借りることもできます。
また、中古住宅を長期優良住宅にリフォームする際には「フラット35リノベ金利Aプラン」を利用することができます。
このプランではフラット35の金利から5年間1.0%を引いた金利が適用されます。
2-5.地震保険料が割引される
長期優良住宅のメリットはこれだけではありません。
地震保険の保険料が割引されるメリットもあります。
長期優良住宅は耐震性に優れていることから、地震保険料の割引を受けることができます。
長期優良住宅は必ず耐震等級2に該当するため、自動的に保険料が30%割引されるのです。
ちなみに、耐震等級3に該当する住宅を建てれば、保険料は50%割引されます。
3.知っておきたい!長期優良住宅の注意点
「長期優良住宅にメリットが多いのは分かったけど、注意点はないの?」
と気になった方もいらっしゃるでしょう。
確かに長期優良住宅には知っておくべき2つの注意点があります。
詳しくはこれから確認していきましょう。
3-1.申請に手間やお金がかかる
長期優良住宅として国に認定してもらうための申請には手間とお金がかかります。
長期優良住宅として認定されるためには、着工前に所管行政庁に申請を行っておく必要があります。
そのために、事前に「登録住宅性能評価機関」に適合証を交付してもらわなくてはなりません。
申請者はこの適合証と維持保全の計画を所管行政庁に提出しなければいけません。
こうした手続きにはおよそ5万円〜6万円程度かかるといわれています。
3-2.購入後も維持に手間がかかる
長期優良住宅は購入後も維持に手間がかかります。
長期優良住宅の認定を受けると、維持保全計画に基づいて、少なくとも10年ごとに建物の点検や修繕を行う義務が生じます。
さらに、維持保全の状況は正確に記録しておかなければいけません。
この記録は所管行政庁から報告を求められた際に使用することになります。
報告を求められた際に虚偽の報告をしたり、報告を怠ったりすると、最大で30万円の罰金が課せられてしまいます。
きちんと計画通りのメンテナンスを行っていないと、長期優良住宅の認定を取り消されてしまうこともあり得るので注意が必要です。
4.まとめ
長期優良住宅は、耐震性が高く、劣化への対策が施されているなど、安全性が高く暮らしやすい住宅です。
一般住宅より購入費用は割高になってしまいますが、さまざまな減税や補助金の対象になっておりコスト面でのメリットも多いといえます。
ただし、長期優良住宅の認定を受けるためには手間とお金がかかる点には注意が必要です。
また定期的なメンテナンスを続けなければいけないことも覚えておきましょう。