自殺のあった不動産を売却する方法は? 専門業者に買い取ってもらうことがベスト?

自殺や他殺、発見の遅れた孤独死、火災等の事故など、人が亡くなっている不動産は事故物件という扱いになり、その事実は告知する必要があります。
とくに、自殺や他殺の場合に告知せずに売買を行うと、告知義務違反として裁判に発展する可能性が非常に高いです。また、自殺のあった物件は売却も難しいとお考えの方も多いと思います。
自殺のあった不動産の売却についてご紹介します。

この記事の監修税理士
監修税理士の税理士法人チェスター代表 福留正明
税理士法人チェスター代表
福留 正明
公認会計士・税理士・行政書士。相続税対策に強みを持つ税理士法人チェスターの代表社員。株式会社チェスターでは、年間100億円以上の売却案件を豊富に取り扱っている。 TV/雑誌など各種メディアからの取材歴多数。また、土地や相続についての書籍も多数出版している。
株式会社チェスターは、総勢200名以上の税理士法人グループの不動産会社です

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1.自殺の事実は告知義務となる

不動産の売却では瑕疵に関する告知義務があります。
売主は、売却する不動産の瑕疵に対して、ご自身が把握していることはすべて伝える必要があります。
瑕疵には物理的瑕疵、法律的瑕疵、環境的瑕疵、心理的瑕疵の4つがあります。

物理的瑕疵
法律的瑕疵
環境的瑕疵
心理的瑕疵

自殺など事故物件に該当する不動産では、上記4つの中でも「心理的瑕疵」への注意が必要です。
心理的瑕疵は、4つの中でももっとも判断や扱いが難しい瑕疵となります。
心理的瑕疵かどうかの判断は売主側ではなく、買主側やその不動産の近隣の方が、その不動産に対して抱く感情が瑕疵に該当することになります。
そして、その事実を知っていたら購入しなかったと判断される内容であれば、その事実を伝えずに売却した場合に告知義務違反に該当することになります。

2.自殺後に一度入居があれば告知は不要?

マンションなどの賃貸物件では、自殺があった後に入居者が入ると、その入居者以降は告知をしなくても良いという話を耳にすることがあります。実際には、自殺後に入居者が入り、その入居者が退去した後の売買や賃貸は告知する必要はないのでしょうか?

過去の判例では、「自殺のあった部屋に居住することは心理的に嫌悪感を持つ事柄であることから、原則としては自殺事故があった旨を告知すべき義務がある」としたうえで、「自殺後に新たな入居者が一定期間生活することにより、その前の入居者が自殺をしたという嫌悪感はかなり薄れるものと考えられるとし、自殺による嫌悪感は時間の経過によって希釈されるとされ、告知義務はない」という判断が下されたケースがあります。

しかし、一定期間の具体的な期間が決められているわけではないため、自殺事故の状況や近隣の方の嫌悪感がどの程度なのかなど状況によって判断が異なる可能性があります。

過去の判例から判断される告知義務の期間は、自殺の場合は7年以上経過しているケースでは告知義務はないとされることが多いようですが、やはり状況等によってことなるため、自己判断は難しいと言えます。

3.敷地内で起こった自殺も告知しなければならない?

売却する不動産がマンション等の場合、ご自身の所有している部屋ではなく、他の部屋や共有部分などマンションの敷地内で起こった自殺も告知義務に該当するのか不安になりますよね。
このようなケースは非常に判断が難しいです。

そもそも、心理的瑕疵の告知は明確な決まりが無いため判断が難しいうえに、ご自身の所有している部屋ではないという状況が重なると、さらに難しくなります。
自殺があったという事実を把握している場合には、敷地内で起こった自殺であっても媒介業者や買主には伝えておいた方が良いと言えます。心理的瑕疵は、あくまでも買主が「知っていれば買わなかった」と感じるかどうかです。

4.自殺のあった不動産の売却方法

自殺のあった不動産の売却が難しいことは事実ですが、売れないという訳ではありません。
しかし、事故物件となる自殺のあった不動産の売却では下記のような対策を行う必要があります。

売却のための対策1:自殺直後の売却は避ける
自殺を含む事故物件の場合、事故直後が最も資産価値が下がっている状態となり、売買価格も大きく下がります。
しかし、「人の噂も七十五日」ということわざがあるように、事件や事故はいずれ風化していきます。
風化とともに、相場と同じとまでは言えなくても、少しずつ価値も回復していく傾向にあります。
とは言え、75日で風化するという訳ではありません。自殺の事実が風化される年数は、状況等によって変わります。しかし、事故直後に売却するよりも事故から数年経過してからの方が、売却しやすくなっている可能性が高くなります。

売却のための対策2:価格を下げて売却する
自殺のあった不動産の売却は、通常の価格で売却することは難しいです。
自殺の事実からどれくらい経過しているか、周囲の人の関心が薄れているかなど、状況によって異なりますが、売買価格を下げて売却を行うことになるでしょう。
では、具体的にどれくらい下げて売却すれば良いのかという事になります。
一般的に事故物件は通常の価格よりも2~3割は値段を下げる必要があります。まずは、2~3割下げた価格で売却活動を行い、それでも売却できない場合にはさらに値段を下げることを検討する必要があります。

売却のため対策3:建物を取り壊し更地にして売却する
自殺のあった建物をそのまま売却するよりも、建物を取り壊して更地にしてから売却した方が売れやすい可能性は高いです。特に、築年数の経過している戸建てなどの場合は建物そのものの価値はかなり低いため、取り壊して更地を売却することも検討しましょう。

5.自殺や他殺などの事故物件は専門業者へ売却することも検討しましょう

自殺や他殺など事故物件の売却は、不動産会社にとっても扱いが難しい不動産になります。
また、購入希望者がなかなか見つからず、どんどん価格が下がっていく可能性も高いです。
なかなか売却できない、扱ってくれる不動産会社が見つからないという場合には、事故物件の買取を専門とする業者に依頼するという方法も検討しましょう。

5-1.買取業者に依頼するメリット

事故物件などを積極的に買取してくれる不動産会社に依頼することのメリットは、告知義務などの不安から解消されるという点と、売却までがスムーズで、早く手放すことが出来るという点です。
自殺があった物件をいつまでも所有していたくない、1日も早く売却したいという場合には、買取業者に買い取ってもらう方法がもっとも早いです。

5-2.買取業者に依頼するデメリット

買取業者に依頼する場合、通常に売却するよりも買取価格は低くなります。買取を行った不動産会社が、その不動産を売却する場合、リフォームを行ったとしても「心理的瑕疵のある物件」ということは変わりありませんので、通常の価格よりも低い金額で売却を行うことになります。そのため、売主から購入する価格も必然的に低くなってしまうのです。

5-3.少しでも高く買い取ってもらうためのポイント

買取業者に依頼する場合、少しでも高く売るためには、自殺後の室内の清掃を特殊清掃業者に依頼するなど出来ることをしておくことも大切です。
また、事故物件専門の買取業者、事故物件の扱いが多い不動産会社・買取業者に複数社見積もりを依頼し、比較検討することも大切です。

まとめ

ご自宅や、ご自身の所有している不動産で自殺があった場合、所有者の方の精神的な負担も大きくなると思います。悲しい出来事のあった不動産を売却して、新たなスタートを切りたいと考えていても、自殺があったという事実は不動産の売却に影響を与えてしまいます。
出来れば隠しておきたい過去ではありますが、隠してしまったことによって後々、大きなトラブルに発展する可能性も十分に考えられます。隠しておきたいと思うことほど、しっかりと告知しておいた方が良いのです。
自殺事故から数年経過している、別の方が一度入居しているなど、告知すべきかどうか悩んだ場合には、後から聞いてどう思うかを考えてみましょう。

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