低廉譲渡の判断基準と課税関係
目次
市場価格よりも安い値段で譲渡した場合の課税
低廉譲渡という言葉があります。その名の通り、安い価格で譲渡することです。
市場の相場よりもはるかに安い価格で譲渡すれば、節税にもなりますし利害関係者同士で行えば有利に運びます。ですがそこにはやはり税制の縛りがあります。
民法上は売買とはお金との交換
民法上、売買と言うのはお金と財産権の交換ということができます。
売買は個人間だけでなく、個人と法人でも、法人同士でも行えます。
そして問題となってくるのが、時価と実際の売買価格が異なる場合です。
時価よりもはるかに安い価格で売買することを、低廉譲渡といいます。
これによって例えば親子間での売買を低廉で行うと、いきすぎた節税となります。
そして贈与税がかかってくるのです。
個人間の低廉譲渡
売り手の税務は収入金額を時価にして譲渡所得計算を行うみなし課税所得はありません。
納税額は(低廉の売却金額-取得価額) × 20%となります。
買い手の税務は
贈与税の課税となります。
買い手が将来的に譲渡するときの取得価額は低廉の売却金額です。
課税が繰り延べされます。
個人から法人への低廉譲渡
売り手の税務
みなし譲渡課税が適用されます。
納税額は(時価ー取得価額)× 20%となります。
著しく低廉でない譲渡価格での譲渡、でない場合のみ、適用されます。
著しく低廉でない場合は原則どおりの譲渡課税となります。
著しく低廉でない譲渡とは、時価の50%以上の金額とされます。
買い手の税務
法人が資産を譲り受けたことになりますので、税法上時価で計上するのが正しいです。
受贈益(益金)の計上が必要です。
法人から個人への低廉譲渡
売り手の税務
時価で譲渡したとして法人所得を計算します。
時価と譲渡価額との差額が、寄付金と売却益で同時に計上されます。
寄付金は損金参入制限を受けますので売却益の金額が法人課税されます。
買い手の税務
法人からの贈与として、一時所得が生じますので確定申告する必要があります。
法人から法人への低廉譲渡
売り手の税務
時価で譲渡したとして法人所得として計算します。売却益が法人課税されます。
買い手の税務
時価で計上します。受贈益の計上が求められます。
法人から法人への低廉譲渡は、グループ法人税制が適用されるケースもありますので注意が必要です。
まとめ:まとめるとこうなります
個人から個人への低廉譲渡 売り手:所得税がかかる、買い手:贈与税がかかる
個人から法人への低廉譲渡 売り手:みなし譲渡所得課税、買い手:法人税がかかる
法人から個人への低廉譲渡 売り手:法人税がかかる、買い手;所得税がかかる
法人から法人への低廉譲渡 売り手:法人税がかかる、買い手:法人税がかかる
このように低廉譲渡でも税金はかかります。
低廉譲渡と贈与税の関係
例えば相続税評価額1億円の不動産を子供に6000万円で売却した場合、贈与税はどのようにかかるのでしょうか。
差額は4000万円ですので、(4000万円ー基礎控除110万円)×50%-225万円=1720万円
1720万円が贈与税額となります。
80%ぐらいであれば贈与税はかからない
一概に、どの金額で何%であれば低廉贈与にあたるか、あたらないかを決めることは非常に難しいです。ですが時価の80%で夫から妻と子に売却した場合に、その差額の20%に対して贈与税がかけられたのは無効であるという判例があります。
妻と子の訴えによって東京地裁により東京国税局の課税が取り消し処分となり、著しく低い価格の譲渡にはあたらないと判断され贈与税の課税処分が取り消されたことがあります。このときの価格が、80%であったことは覚えておくといいでしょう。
福留 正明
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