保険を活用した相続対策|生命保険が相続対策となる理由
生命保険は相続税対策に役立つと聞いたことがある方も多いと思います。また、そう言われて契約したという人もいらっしゃるのではないでしょうか?生命保険は確かに相続税対策として有効ですが、契約している保険の種類や契約の内容によっては相続税対策として役に立たないということもあります。
相続税対策として保険を有効活用するためのポイントを抑えておきましょう。
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目次
1.生命保険の種類
生命保険はざっくりとわけると「終身保険」と「定期保険」の2つに分けられます。終身保険は保障内容が一生涯続く保険です。定期保険は保障期間の定めがある保険で、「掛け捨て」と言われる保険です。
60歳まで保険料を支払う契約の場合、終身保険であれば60歳以降は保険料を支払う必要はなく、その後に亡くなった場合には契約通りに保険金は支払われます。定期保険の場合には、60歳で契約が終了となるため契約期間を過ぎてから亡くなった場合には保険金は支払われません。
その代わり、定期保険の方が終身保険よりも保険料は低く設定されています。つまり、相続対策として利用する場合には「終身保険」の方が確実ということになります。
2.保険契約と課税の関係
保険料の支払いを行う保険契約者、被保険者、保険金の受取人の関係によって課税の種類が異なります。
相続税の課税対象となる保険契約は保険契約者と被保険者が被相続人である必要があります。
2-1.受取人が相続人では無い場合
保険金の受取人は孫や子の配偶者など相続人以外の方を受取人とすることも可能です。
しかし、相続人以外の方が受取人となった場合には以下の点での注意が必要です。
- 相続税が2割加算となる
- 死亡保険金の非課税枠が使えない
2-2.受取人が相続放棄している場合
保険金の受取人が相続放棄している場合でも保険金を受取ることは可能です。そして、受け取った死亡保険金に関しては相続税の課税対象となります。
相続放棄している場合には当該相続の相続人としての権利を放棄していることになるため、相続人ではありません。そのため、死亡保険金の非課税枠は適用されません。
【相続税の2割加算とは】
相続や遺贈によって財産を取得した人が被相続人の配偶者または一親等の血族以外の場合には相続税が2割加算されるというルールがあります。相続放棄した人は「配偶者または一親等の血族」に該当するため相続税の2割加算の対象とはなりません。また、代襲相続によって財産を取得することになった場合にも2割加算には該当しません。
3.生命保険が相続対策となる4つの理由
受取人固有の財産である保険金は相続税の課税対象となります。結果的に相続税を支払う必要があるのになぜ相続対策となるのでしょうか?
3-1.死亡保険には非課税枠がある
みなし相続財産である死亡保険には非課税枠があります。
上記で算出された金額までは相続税がかかりません。
例えば、法定相続人が妻・子2名だった場合、3人×500万円=1,500万円
1,500万円を超えた部分が相続税の課税対象価格となります。
この法定相続人は相続放棄した人も人数に含まれるため、相続放棄した人を減らして考える必要はありません。
しかし、先程ご説明したように相続放棄している人は非課税枠が適用されないので注意して下さい。
(1)受取人が複数いる場合の非課税枠は?
生命保険の受取人は複数人にしておくことも出来ます。保険金の分割取得と呼ばれる方法です。
分割取得の場合の非課税枠は下記の算出式で計算されます。
実際に受け取った保険金に従って非課税枠を接分する形になります。
3-2.納税資金として活用できる
相続税の納税は相続発生から10ヶ月以内に現金一括納付が原則です。
相続財産が現金であればそこから相続税を支払うことが出来ますが、不動産などすぐに現金化することが難しい財産しか無い場合、相続税の支払いに困ってしまうということも考えられます。
保険金は保険事故が発生するとすぐに保険金が支払われます。受け取った保険金で相続税を支払うことができるので、相続人にとっても安心です。
3-3.争族対策としても効果がある
(1)受取人が指定できる
被相続人の遺した財産は遺言がある場合には遺言に従い、遺言が無い場合には相続人が話合いによって分割を決める遺産分割協議を行います。
保険金は受取人の固有の財産となるため遺産分割の対象にはなりません。
遺産分割で争いになる理由は「最後まで面倒みていたから私が多くもらうべき」「他の兄弟は大学まで学費を出してもらったけど、自分は高卒で働いていたんだから学費分くらい多くもらいたい」などがあります。
このような争いにならないように、同居して面倒をみてくれた娘を受取人にしようなど受取人を指定することが出来ます。
(2)代償金として活用する
相続争いとなる要因のもう一つは、分割が難しい財産のみ相続した場合です。
例えば相続財産が自宅不動産で、相続人が3兄妹だった場合家を分けることは難しいです。
そこで、兄が自宅を相続し、弟と妹に現金を支払うという代償分割を選択しました。
このようなケースで、兄が死亡保険金の受取人となっていれば受け取った保険金で代償を支払うことが出来ます。
4.生存給付金を贈与する
生存給付金は保険期間中に被保険者に支払われる給付金です。このような特約のついた生命保険の場合、生存給付金を子や孫に渡す契約にしておくことで相続対策に繋がります。
相続税は被相続人の持っている財産に課税されます。生存給付金が被保険者である被相続人に支払われ、そのまま財産として残せば本来の相続財産となります。
しかし、子や孫が受取ることで被相続人の財産にはならないのです。生前贈与と同様の相続対策の考え方を生命保険で行うという方法です。
年間110万円以下であれば贈与税が課税されることもなく、給付金であれば支払われた通知が残るため贈与契約書を作成する必要もありません。
5.自分の葬儀代のために保険を活用する
相続税対策としての死亡保険金についてご紹介しましたが、終身保険の場合にはどうしても保険料が高くなってしまいます。せめて自分の葬儀代くらいは遺したいという場合には「少額短期保険」に加入しておくという方法があります。
5-1.少額短期保険とは
少額短期保険とはその名の通り、保険金額が少額で保険期間が1年未満以内の保険を言います。
受取れる死亡保険金は最大300万円となり、その分保険料も低くなります。
5-2.葬儀にかかる費用
葬儀にかかる費用は参列者の数や葬儀の規模によって異なりますが、おおよそ40万円~120万円が一般的な相場となります。
5-3.葬儀代のために保険を活用
葬儀の費用は自分の口座から出してもらえば良いと思われるでしょうが、亡くなった方の口座は遺産分割が終了するまで凍結されてしまいます。
そのため、すぐに預貯金を引き出すことはできません。しかし、保険金はすぐに支払われるため葬儀費用に当てることが出来ます。自分の葬式代くらいは準備しておきたいという場合には少額短期保険がオススメです。
6.相続税の節税対策にならない「満期保険」
生存保険の一種に「満期保険金」があります。満期保険金は契約期間満了時に、被保険者の生存を条件として受取人に保険金が支払われます。
受取人が保険契約者と同じ場合には所得税、保険契約者と異なる場合には贈与税の課税対象となります。
被保険者の生存が条件となるため、本記事の「相続税の節税対策」にはなりません。契約内容には注意して下さい。
まとめ
相続対策として保険を活用する場合には、終身保険、ご自身の葬儀代として保険を活用する場合には少額短期保険がおすすめです。契約内容によって課税される税金の種類が異なります。
相続対策で契約していたつもりが、よくみたら贈与税だったということもあり得ますので契約内容をしっかりと確認しましょう。また、独身時代に契約して受取人の変更をしておらず、非課税枠が適用されないということのないようにご自身の状況が変わった場合には保険契約を確認するようにしてください。
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