借地権を売るには?売却で失敗しないためのコツと注意点を徹底解説!
「借地権は売却できるのかな?」
「借地権付きの不動産を売却するにはどうすればいいのかな?」
借地権や借地権付きの不動産を売却しようとしたとき、このように悩む方が多いのではないでしょうか。
土地も住宅もすべて自分のものである一般的な不動産とは異なり、借地権の場合は土地の所有者が別にいます。
そのため借地権を売却する際には、通常の不動産売却よりも手順やルールが複雑になります。
また多くのケースでは、土地の所有者の承諾を得ることなく借地権を自由に売却することはできません。
借地権を一般的な不動産と同じように扱うと、売却できないどころかトラブルに発展するケースもあるので注意が必要です。
そこでこの記事では、借地権の売却の手順や失敗しないためのコツ・注意点などを解説します。
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目次
1.借地権とは
借地権とは土地代を支払う代わりに地主(土地の持ち主)から土地を借りて使用する権利のことをいいます。
借地借家法(または改定前の借地法)によって定められており、主に建物の所有を目的とする場合に適用されます。
また借地権が借地人(土地の借主)にある場合、地主が持つ土地の権利のことを「底地権」といいます。
以下の図は借地権と底地権の関係を示したものです。
土地の所有者はあくまで底地権を持つ地主ですが、土地を使う権利は借地権を持つ借地人にあります。
借地権の「土地を使う権利」と底地権の「土地を保有する権利」の両方の権利が認められているのが土地の所有権です。
借地権、底地権、所有権の関係を以下の図にまとめました。
カップ(借地権)とソーサー(底地権)は合わさることで、一対の食器としての価値(所有権)を持ちます。
カップとソーサーが単体では不完全であるのと同様に、借地権と底地権も単体では活用しにくくなるため、それぞれの価値は所有権より低くなるといわれています。
なお借地権は財産とみなされるため、相続することも可能です。
1-1.借地権には「地上権」と「賃借権」がある
借地権は「地上権」と「賃借権」の2種類に大別されます。
どちらも主に建物の所有を目的として土地を借りる権利ですが、地上権は物権、賃借権は債権とされ法的に特性が異なります。
一方で「債権」は人に対する権利です。特定の人に対してのみ一定の行為を請求できるとされ、第三者に対して権利を主張することはできません。
ここからは地上権と賃借権について詳しく解説します。
1-1-1.地上権
地上権は所有者のいる土地を使用できる権利であり、民法では物権とされています。
建物自体に権利が発生するため、地上権は地主の承諾なしでも譲渡・転貸することが可能です。
また地上権には所有権のように登記をする義務があり、抵当権を設定することもできます。
ほとんどの場合で地代が発生しますが、賃借料の定めはないため無償で貸し出されているケースもあります。
1-1-2.賃借権
賃借権は土地を借りた人が地主に対し、地代を支払うことで土地の貸し出しを請求できる権利です。
民法で債権と定められているため、地主の承諾を得なければ権利を譲渡・転貸することはできません。
なお賃借権を第三者に売買する場合には、地主へ譲渡承諾料を支払うのが一般的です。
1-2.借地権の契約の種類
借地権は適用される法律と内容の違いで大きく以下の3種類に分けられます。
- ・旧借地権
- ・普通借地権
- ・定期借地権
借地権に適用される法律は契約を結んだ時期によって異なり、民法改定前の借地権は「旧借地権」と呼ばれます。
また、現在の法律では「普通借地権」と「定期借地権」の2種類の借地権が設けられています。
ここからは借地権の契約の種類とそれぞれの特徴について解説します。
1-2-1.旧借地権
平成4年8月に現在の法律が施行されるまでに結んだ借地契約には、旧借地権が適用されます。
旧借地権は建物の構造によって、以下のように権利の存続期間や更新後の期間が異なるのが特徴です。
建物の構造 | 存続期間 | 更新後の期間 |
---|---|---|
木造 | ・期間の定めがある場合:20年以上 ・期間の定めがない場合:30年 |
・期間の定めがある場合:20年以上 ・期間の定めがない場合:20年 |
鉄筋/鉄筋コンクリート | ・期間の定めがある場合:30年 ・期間の定めがない場合:60年 |
・期間の定めがある場合:30年以上 ・期間の定めがない場合:30年 |
存続期間の定めがある場合、契約更新を行えば借地権を存続することができます。
旧法において契約更新の決定権があるのは借地人のみであり、正当な理由がなければ地主が更新を拒否することはできません。
そのため旧法が適用されていれば、借地権の契約を更新し続ける限り半永久的に権利を存続することができます。
1-2-2.普通借地権
現在の法律(借地借家法)により設定された借地権のうち、契約期間の制限がないものを普通借地権といいます。
普通借地権の存続期間と契約の更新の規定は以下のようになっています。
契約の存続期間 | 契約更新の規定 |
---|---|
最短30年 | 借地人の希望により更新可。1回目の更新は契約から20年以上経ってから、2回目以降は10年ごとに行う。 |
普通借地権の場合、契約期間が終わったからという理由で地主から契約を打ち切ったり更新を断ったりすることはできません。
なお新法では、建物の構造による存続期間や更新期間の違いは設けられていません。
1-2-3.定期借地権
定期借地権は現在の法律によって規定された借地権のうち、原則として契約更新ができないものを指します。
定期借地権の特徴を以下にまとめました。
契約の存続期間 | 契約更新の規定 |
---|---|
50年以上 | 原則、契約更新は不可。契約終了後は更地にして返還する。 |
契約期間が30年と規定されている普通借地権と比べ、定期借地権の最低期間は50年以上とより長い期間が設定されています。
しかし更新は原則できないため、契約終了後は建物を解体して更地にしてから地主に返還しなければなりません。
ここまでをまとめてみましょう。
借地権の売却に進む前に、自分の持っている借地権の種類や契約の規定などを確かめておくと良いでしょう。
2.借地権の売却方法
借地権を売却しようとしたとき、このような疑問を持つ方も多いのではないでしょうか?
借地権の売却方法には主に以下の四つがあります。
- 1.借地権を地主に売却する
- 2.借地権を第三者に売却する
- 3.等価交換を行い所有権にして第三者に売却する
- 4.地主と協力して借地権と底地権を第三者に売却する
借地権の売却は土地や建物の条件はもちろん、地主との交渉も必要になるため状況によって選択できる売却方法が異なります。
この章では借地権の売却方法について解説します。
2-1.借地権を地主に売却する
借地権は地主から買い取った権利であるため、以下の図のように地主に再度売却することも可能です。
また借地人が借地権を手放す際、地主には優先的に借地権を買い取る権利があります。
この規定により、地主は自らの土地の借地権が第三者にむやみに売却されるのを防ぐことができます。
第三者に借地権を売られてしまうよりは、買い戻して賃借関係を消滅させる方が良いと考える地主も少なくありません。
地主は土地の底地権を持っているため、借地権を買い戻すことで土地の所有権を得ることができます。
一般的に所有権の方が底地権や借地権よりも扱いやすいため、地主にとって借地権を買い取るメリットは大きいといえるでしょう。
なお借地権を地主に売却する際には、借地権のみを売る方法と借地権を建物ごと売却する方法があります。
2-2.借地権を第三者に売却する
地主が借地権を買い戻さない場合には、個人や不動産会社など地主以外の第三者への売却を検討しましょう。
第三者に借地権を売却するときには、以下の図のように地主に申請して承諾を得る必要があります。
借地権を第三者に売却する場合、個人の買い主はもちろん通常の不動産売却と同様に不動産会社に買取を依頼することもできます。
なお不動産会社を通して第三者に借地権を売るときには、借地権付き住宅として建物ごと売却するのが一般的です。
また地主の承諾を得る際には、借地人から地主に対して譲渡承諾料を支払うのが慣例です。
譲渡承諾料の支払いは法的に定められているものではなく、借地権価格から導き出した水準を目安に契約条件や借地期間などを考慮して決定されます。
しかし、地主が納得しなければ借地権を売却することはできないため、場合によっては高額の支払いが必要になることもあります。
2-3.等価交換を行い所有権にして第三者に売却する
ある程度の広さがある土地の場合、借地権と地主の持っている底地権を等価交換し所有権を得てから売却する方法もあります。
不動産業界では土地と建物、借地権と底地権などの等価交換が行われます。
底地権と借地権を等価交換するメリットは以下の三つです。
- ・借地権・底地権の権利関係が解消され、土地の所有権が手に入る
- ・所有権とすることで借地権・底地権の一方を持つより不動産の価値が上がる
- ・所有権を持つ不動産であれば自由に利用・売却することができる
借地権のみを保有する場合、自由に土地や建物を売ることはできませんが、所有権を持つことで自分の采配で不動産を売却できます。
また借地権と底地権の所有者が別の土地よりも、所有権のある土地の方が不動産の価値が高いとされるため、それぞれの権利を別で売るよりも高く売ることができます。
なお等価交換できる割合よりも多く土地を所有したい場合には、差額を支払うことで所有権を得るケースもあります。
しかし、差額を支払って得た土地に関しては等価交換に該当せず、譲渡所得税が発生するので注意しましょう。
※土地や建物を等価交換したときの譲渡所得税については、国土交通省ホームページの「土地建物の交換をしたときの特例」にて詳細をご確認ください。
等価交換を行う際には不動産会社などの専門家を間に挟み、地主と交渉するのが一般的です。
2-4.地主と協力して借地権と底地権を第三者に売却する
借地人と地主が協力して、借地権と底地権をセットで第三者に売却する方法もあります。
借地権と底地権を同時に売却した場合、買い主は所有権を得ることができるため不動産の価値が高くなります。
借地権・底地権のどちらか一方のみを売却した時よりも、高額での取引が期待できるでしょう。
しかし、借地権と底地権を一緒に売却するためには、地主との交渉や説得が必要になります。
3.借地権を売買するメリット
土地を購入するときには借地権や底地権の一方ではなく、土地の所有権を持ちたいという人も多いでしょう。
しかし以下のようなメリットがあるため、不動産を購入する際に所有権ではなく借地権をあえて選ぶ人もいます。
- ・通常より安く不動産を購入できる
- ・契約更新できれば半永久的に土地を使える
- ・土地の固定資産税がかからない
この章ではそれぞれのメリットについて詳しく解説します。
3-1.通常より安く不動産を購入できる
所有権でなく借地権を購入することで、通常より安い価格で土地を購入できます。
借地権は定期的に地代がかかりますが、その分不動産購入時の初期費用を抑えることができます。
所有権に比べると借地権は低価格で取引されるため、入手しやすい物件としてニーズがあります。
3-2.契約更新できれば半永久的に土地を使える
借地権の種類によって異なりますが、契約を更新すれば半永久的に土地を使い続けることができます。
なお契約更新が認められている場合、正当な事由がない限り期限が来ても地主が一方的に借地契約を終了させることはできません。
地主が正当な事由なく更新を拒否する場合には、多額の立退料を支払って借地人の承諾を得なければならないケースもあります。
借地契約の解除は地主にとって負担が大きいため、基本的に地代の支払いをきちんとしていれば土地を借り続けることができます。
なお借地権は所有権と同様に相続財産であり、被相続人であれば地主からの許可を得なくても相続できます。
3-3.土地の固定資産税がかからない
土地にかかる固定資産税などの税金は、底地権を持つ地主が負担します。
土地の権利が借地権と底地権に分かれている場合、実質的に土地を利用しているのが借地人だとしても土地の所有者はあくまで地主です。
そのため借地人に土地の固定資産税は課されません。
4.借地権を売買するデメリット
借地権には土地購入の初期費用を抑えられるなどのメリットがある一方で、あくまで借地であることから以下のようなデメリットも生じます。
- ・地代を毎月支払う必要がある
- ・建物の増改築や売買に地主の承諾が必要になる
- ・建て替え時に地主の承諾が必要になる
- ・担保としての価値が低く融資を受けにくい
この章では借地権のデメリットについて解説します。
4-1.地代を毎月支払う必要がある
借地権を保有し土地を利用し続けるためには、地主に対して毎月地代を支払う必要があります。
所有権を得て家を建てるケースに比べると借地権の場合は初期費用を抑えられますが、その分地代として長期のコストが発生するため注意が必要です。
また借地契約の期間中であっても、以下のような理由により地代が値上げされるケースもあります。
- ・土地に対する税金が変更されたとき
- ・周辺の土地の価格変化があったとき
- ・条件の近い周辺の土地に比べて地代に極端な差があるとき
4-2.建物の増改築や売買に地主の承諾が必要になる
借地権を持つ土地にある建物の増改築や売買をするには、必ず土地の所有者である地主の承諾が必要です。
このような疑問を感じる方も多いでしょう。
しかし床面積や土地の利用形態の変更などは、もともとの借地契約から逸脱する増改築とみなされ地主の承諾を得なければ行うことができません。
また、土地の所有者はあくまで地主であるため、建物の所有権が借地人にあったとしても地主の許可なく自由に売買することはできません。
増改築の承諾を得る際には「増改築承諾料」を要求されるケースもあり、通常は更地価格の2~4%程度で決定します。
また、借地権付きの建物を売るときには権利の譲渡が行われるため、借地権の10%の譲渡承諾料を地主に支払うのが一般的です。
しかし地主との関係が悪化する可能性が高いため、時間がかかってもできるだけ話し合いで解決するのが望ましいでしょう。
4-3.建て替え時に地主の承諾が必要になる
借地権では建物を取り壊したり新たに立て替えたりする場合にも、地主の承諾を得る必要があります。
増改築と異なり、建て替えをした場合には借地契約そのものが延長されます。
借地契約が延長されることは借地人にとって大きなメリットだといえます。
しかし借地契約を終了させたい一部の地主にとってはデメリットとなるため、建て替え時には地主の承諾がなかなか得られないケースもあり注意が必要です。
4-4.担保としての価値が低く融資を受けにくい
借地に建つ物件は担保としての価値が低いため融資を受けにくいといわれています。
通常、銀行などから融資を受ける際には土地や建物などの不動産を担保にできます。
しかし土地の権利が借地権である場合、所有権は建物にしかなく土地は担保にならないため不動産の価値が下がります。
不動産を担保に融資を受けたいと思っても希望する金額では受理されなかったり、条件によってはローンの審査に落ちてしまったりすることも考えられます。
5.借地権の売却に失敗しないためのコツと注意点
借地権を売却しようと思ったとき、このように不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一般的な所有権と比較すると、借地権の売却は手続きやルールが複雑です。
売却の準備をしっかりしておかないとなかなか売却できなかったり、裁判に発展したりといったトラブルになることも考えられます。
また、契約の条件や土地、物件の状況によって適切な売却方法も異なります。
この章では借地権の売却に失敗しないために押さえておきたいコツと注意点を紹介します。
5-1.複数の不動産会社に査定を依頼する
借地権の売却を決めたら、複数の不動産会社の査定を受けるのがおすすめです。
借地権の売却方法は状況により異なりますが、複数の不動産会社の査定結果を比較することで自身の持つ不動産の相場価格を把握できます。
また仲介を依頼して借地権の買い主を探す場合には、不動産会社選びも重要です。
査定額の根拠や不動産会社の担当者の対応などを見極めて、査定の段階で信頼できる不動産会社であるかどうかを確かめておきましょう。
「宅地建物取引業法」第34条の2第2項において、不動産会社には査定額の根拠を明示する義務がありますから必ず根拠を尋ねて明確な回答があるか確かめましょう。
5-2.実績のある不動産会社に仲介を依頼する
仲介を依頼して買い主を探す場合には、借地権の売却実績が豊富な不動産会社を選びましょう。
不動産会社によっては一般的な不動産売却の実績はあっても、借地権の売却実績が少なく取り扱いに慣れていない会社もあります。
所有権よりも借地権の方が売却の過程が複雑であり、特に地主との交渉が重要です。
経験豊富な不動産会社に任せれば状況に合わせた提案を得られる可能性が高く、地主や買い主との交渉も進めやすいでしょう。
5-3.借地権を売却したい旨を地主に伝えておく
借地権の売却を決めたら、まずは土地の持ち主である地主に伝えておきましょう。
借地権を売却する際、最も買取の優先順位が高いのは地主です。
この規定により借地人が地主の承諾なく借地権を第三者に売却しようとしたとき、申し立てを行えば優先的に借地権を買取できます。
第三者に土地の権利を譲渡するなら自分で買い受けたいと考える地主も多いため、借地権は地主に売却できるケースも少なくありません。
また地主が借地権を買い受けないケースでも、第三者に売却する際には地主の許可を得る必要があります。
あらかじめ地主に借地権を売却したい旨を伝えておけば、その後の交渉や売却活動をスムーズに進めやすくなるでしょう。
なお状況によっては、借地権の売却に地主の協力を得られるケースもあります。
土地の権利の一部を等価交換して借地権ではなく所有権として売却したり、地主と同時に土地の権利を売却したりする方法もあるため、実現すれば売却を有利に進めることができます。
借地権の売却を行うには地主との交渉が必要不可欠です。
普段から地主との良好な関係を築き、売却活動を始める前には必ず地主に伺いを立てましょう。
5-4.地主との交渉は不動産会社を間に挟んで行う
地主と借地権に関する交渉をする際には、不動産会社を間に挟んで行うのがおすすめです。
借地権を売却する際には、売却の承諾許可や承諾料、権利の売買、売却の方法などさまざまな交渉や地主との話し合いが必要になります。
専門知識を持つプロに仲介を依頼すれば、借地人と地主の2者間で交渉を行うより公平性を保って話し合いを進めることができます。
地主が借地権の買い受けを申し出た場合にも、単純に土地を返すのではなく、行われるのはあくまで権利の売買です。
そのため地主へ売却するケースであっても、不動産会社に仲介を依頼して売却価格や条件を事前に相談してから売買の交渉に進むのが望ましいでしょう。
6.借地権の売却手順
実際に借地権を売る前に、売却がどのような流れで進むのか知っておきたいという人もいらっしゃるでしょう。
借地権を売却する際、買い主となるのは地主か第三者(個人、不動産会社など)のどちらかです。
地主には優先的に借地権を買い取る権利があり、交渉すれば地主が売却相手となるケースも少なくありません。
しかし地主が購入を希望しない場合、借地人は地主の承諾を得て借地権を第三者に売却することになります。
通常の不動産売却のように、第三者に借地権を売却する際には不動産会社に仲介を依頼して買い主を探すのが一般的です。
そこでこの章では、不動産仲介で借地権を売却する手順を解説します。
STEP1 複数の不動産会社に査定を依頼する
借地権の売却を検討し始めたら、まずは複数の不動産会社に査定を依頼しましょう。
複数の不動産会社の査定結果を比較すれば、自分の不動産のおおよその相場を知ることができます。
なお不動産の査定方法には机上査定と訪問査定の2種類があります。
土地や間取りなどの不動産情報や過去の取引を参考にし、おおよその査定額を算出します。
「訪問査定」とはその名の通り不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、詳細な査定を行う方法です。
不動産の状態を勘案することでより正確な見積もりを算出します。
まず売却の条件に合う不動産会社を6~10社ほどピックアップして机上査定を受け、結果や不動産会社の対応などを比較した上で2~3社選んで訪問査定を依頼すると良いでしょう。
不動産会社と一口でいっても、「地域密着型の会社」「特定の物件に特化した会社」「実績豊富な大手の会社」などその強みはさまざまです。
不動産会社によって不動産の販路なども異なるため、査定結果にも大きな差が出るケースがあります。
より好条件で売却できそうな不動産会社を見つけるためにも、複数の不動産会社に査定を依頼するのがおすすめです。
なお、おすすめの不動産一括査定サイトは6章で紹介しています。
話を通さないうちに現地で査定を行うだけでも、地主によってはトラブルになってしまうことがあります。
地主との交渉は不動産会社を間に挟んで行いますが、具体的な話し合いを進める前に意思確認をして筋を通しておくと無難です。
「机上査定」を受けて信頼できそうな不動産会社が見つかったら、地主との事前交渉について相談してアドバイスをもらうと良いでしょう。
STEP2 不動産会社に仲介を依頼する
信頼できる不動産会社が見つかったら、仲介を依頼しましょう。
借地権を売却する場合も、通常の不動産売却と同様に媒介契約を結びます。
不動産業界では仲介のことを媒介と呼ぶため、仲介契約ではなく媒介契約といいます。
媒介契約には以下の3種類があり、それぞれ特徴も異なります。
契約の種類 | 売却活動に関する報告の義務 | 他社との同時契約 | レインズへの 登録義務 |
自己発見取引 | 契約期間 |
---|---|---|---|---|---|
専属専任媒介契約 | 1週間に1回以上 | 不可 | 契約から5日以内 | 不可 | 最長3カ月 |
専任媒介契約 | 2週間に1回以上 | 不可 | 契約から7日以内 | 可 | 最長3カ月 |
一般媒介契約 | なし | 可 | なし | 可 | 規定なし(3カ月が一般的) |
専属専任媒介契約と専任媒介契約の場合は、不動産会社から定期的な売却活動の報告を受けることができます。
また、不動産会社には物件の情報をレインズに登録することが義務付けられています。
定期的な活動報告があれば売却活動が不透明になりにくく、物件情報がレインズに掲載されれば売却のチャンスが増えるといわれています。
なお一般媒介契約の場合、不動産会社には定期的な活動報告を行ったり物件情報をレインズに登録したりする義務はありません。
その代わり契約の自由度が高く、複数の不動産会社と同時に媒介契約を結ぶことが可能です。
しかし複数の不動産会社との同時契約は、借地権の売買をする際にはおすすめできません。
一般的な所有権の不動産売却とは異なり、借地権を売る際には地主との交渉を行う必要があります。
複数の不動産会社に同時に仲介を依頼した場合、売却活動が始まれば地主も複数社と交渉することになってしまいます。
地主側への負担が大きくなってしまうため、借地権の売却を依頼するのは1社に絞りましょう。
専属専任媒介契約と専任媒介契約の大きな違いは自己発見取引が認められているか否かです。
買い主候補の心当たりがある場合には、自己発見取引が可能な専任媒介契約を選ぶと良いでしょう。
STEP3 地主と交渉をして売却の承諾を得る
媒介契約を結んだら、不動産会社の担当者を間に挟んで地主との交渉を行いましょう。
交渉の仕方や条件によっては地主からの承諾がなかなか得られなかったり、高額な承諾料を要求されたりするケースもあるため話し合いは慎重に行いましょう。
また地主との関係が良好であっても、基本的には専門知識を持つ不動産会社を間に挟んで交渉を進めるのがおすすめです。
なお地主との交渉の際には売却の承諾だけでなく、以下のポイントも話し合います。
- ・譲渡承諾料の金額
- ・売却後の建て替え・増築の可否
- ・地代の取り決め
地主との交渉の際には単に売却を認めてくれるか否かだけでなく、売却後の建て替えや増築などの条件についても話し合っておくと良いでしょう。
なお譲渡承諾料についての明確な取り決めはなく、借地権価格の10%程度が目安となります。
交渉を上手くまとめるためにも、借地権の売却経験が豊富な不動産会社の担当者に依頼しましょう。
STEP4 不動産会社が売却活動を行う
地主の了承を得たら、不動産会社が売却活動を開始します。
具体的には以下のような売却活動が行われます。
- ・レインズへの不動産情報の登録
- ・不動産ポータルサイト(SUUMOやLIFULL HOME’Sなど)に物件情報を掲載
- ・チラシを作成し近隣の住宅にポスティング
- ・自社の顧客へ打診
近年ではインターネットを利用して物件を探すケースが主流になったため、Web上でのPRは売却活動に大きく影響すると考えられます。
一般公開されているSUUMOやLIFULL HOME‘Sなどの不動産ポータルサイトもありますから、売却したい物件がどのようにPRされているか確認しておくのがおすすめです。
STEP5 売り主と買い主で売買契約を結ぶ
不動産会社が買い主を見つけたら、売り主と買い主で売買契約を結びます。
売買契約を結ぶときには以下の手続きを行います。
- ・買い主への重要事項説明
- ・重要事項説明書の交付
- ・契約書類の読み合わせ
- ・契約書類の署名、押印
- ・仲介手数料の支払い
- ・手付金の支払い
借地権を売却する際は通常とは異なり、売買契約を結んだ後に地主の承諾書を得る必要があるため停止条件付きの契約となります。
契約に停止条件がある場合、契約が成立しても停止条件が成就するまで効力はありません。
借地権を売却する場合、売り主と買い主は「地主の文章による承諾を得る」という停止条件付きの売買契約を結びます。
そのため地主の承諾書を受け取るまでは契約に効力はなく、承諾書を得られなかった場合には売買契約自体が白紙になります。
なお、地主からの承諾書を得るまでは売買契約が確定しないため仲介手数料は発生しません。
難しい手続きや書類の作成などは不動産会社の仕事ですが、売り主自身も必ず契約書にしっかり目を通し疑問点があれば確認してから署名、押印しましょう。
STEP6 地主の合意を得て借地権譲渡承諾書を作成する
売買契約を締結したら、地主の合意を得て借地権譲渡承諾書を取り交わしましょう。
売り主と買い主で交わした借地権の契約は「地主の承諾を得る」という停止条件付の売買契約です。
売買契約を結んでも停止条件を成就させるまでは契約に効力はなく、地主から借地権譲渡承諾書を受け取ることで正式に契約が成立します。
なお借地権譲渡承諾書を受け取ったタイミングで不動産会社に支払う仲介手数料が発生します。
仲介手数料に明確な決まりはありませんが、法律で以下のように上限が定められています。
成約価格 | 仲介手数料 |
---|---|
200万円以下 | 成約価格の5% |
200万円~400万円以下 | 成約価格の4% |
400万円超 | 成約価格の3% |
不動産会社は上限を超える仲介手数料やその他の費用、報酬を受け取ることはできません。
なお仲介手数料の支払いは売買契約の締結時に半額、不動産の引き渡しが完了するまでに残りの半額を支払うのが一般的です。
STEP7 借地権を引き渡す
地主から借地権譲渡承諾書を受け取ったら、売買契約および地主との譲渡条件に基づいて代金の決済や費用の清算などを行い買い主に借地権を引き渡します。
借地権の引き渡しの際には以下のような手続きが行われます。
- ・代金の決済
- ・費用の清算
- ・必要書類の引き渡し
- ・建物の登記変更
- ・不動産の状態の確認
売却する借地に建物がある場合、借地権の譲渡に伴って買い主に建物の所有権が移ります。
そのため建物の所有権移転登記を行う必要があります。
しかし、借地借家法10条1項にある救済措置により、借地権の登記がなくても借地上の建物を所有するとき第三者への対抗力を持つとされています。
つまり借地上にある建物の所有権を登記することで借地権を証明できます。
所有権の登記には所有者や抵当権などに関する情報が記載されます。
なお所有権移転登記を行う際には、司法書士に依頼するのが一般的です。
6.借地権の売却におすすめの不動産一括査定サイト
このように気になっている方も多いのではないでしょうか?
借地権の売却に強い不動産会社を見つけるには、不動産一括査定サイトを利用するのがおすすめです。
不動産一括査定サイトとは、その名の通り複数の不動産会社に同時に査定を申し込めるサービスです。
不動産一括査定サイトの多くは、独自の基準を設けて悪質な業社の排除に取り組んでいます。
つまり自力で不動産会社を探し回るよりも、騙されてしまうリスクが少なく効率も良いサービスだといえます。
なお不動産一括査定サイトと一口でいっても、以下のようにサイトの規模や参加している不動産会社の傾向、特性などは異なります。
「大手企業が参加するサイト」「特定の種類の不動産に特化したサイト」「地域密着型のサイト」など、不動産一括査定サイトによってさまざまな強みがあります。
複数の不動産一括査定サイトを併用したり、目的に合わせて使い分けたりすることで売却したい物件に合った不動産会社を見つけやすくなるでしょう。
ここからは借地権の売却におすすめの不動産一括査定サイトを紹介します。
サイト名 | 参加 不動産会社数 |
特徴 | 同時査定 依頼可能数 |
運営会社 |
---|---|---|---|---|
HOME4U | 1,800社 | 大手から中小までバランス良く参加 | 最大6社 | NTTデータ スマートソーシング |
すまいValue | 6社 | 大手6社が共同で運営 | 最大6社 | 東急リバブル、住友不動産販売、三菱地所ハウスネット、三井のリハウス、小田急不動産、野村不動産ソリューションズ |
SUUMO | 不明 | 知名度No.1だから安心感も抜群 | 不明 | リクルート |
LIFULL HOME’S | 3,200社以上 | 参加不動産会社数最多クラス | 最大10社 | LIFULL |
イエウール | 1,974社以上 | 地方の物件にも強い | 最大6社 | Speee |
おすすめ1 HOME4U:安心安全・実績十分の老舗サービス
参加不動産 会社数 |
1,800社 |
---|---|
同時査定依頼可能数 | 最大6社 |
査定可能不動産 | マンション一室、一戸建て、土地、ビル一室、店舗・事務所・倉庫、マンション一棟、アパート一棟、ビル一棟、その他 |
代表的な参加不動産会社 | 三井住友トラスト不動産、三菱UFJ不動産販売、みずほ不動産販売、京王不動産、CENTURY21など |
HOME4Uは2001年にサービスが開始された日本で最も歴史の古い不動産一括査定サイトです。
大手から中小まで全国の不動産会社1,800社が参加しており、都市部から地方まで幅広い地域をカバーしています。
HOME4Uではさまざまな種類の不動産の査定を申し込むことができます。
また、悪質な不動産会社を排除するための独自の取り組みも行っているため安心して利用できます。
なお官公庁などとも取引がある「NTTデータスマートソーシング」というNTTデータグループの企業が運営を行っており、個人情報の管理も徹底しています。
査定の依頼は同時に最大6社まで可能なので、信頼できる不動産会社を効率よく見つけられるでしょう。
おすすめ2 すまいValue:業界をけん引する大手6社が運営
参加不動産 会社数 |
6社(全国900店舗) |
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同時査定依頼可能数 | 最大6社 |
査定可能不動産 | マンション、一戸建て、土地、マンション一棟、ビル一棟、アパート一棟、その他 |
運営不動産会社 | 東急リバブル、住友不動産販売、三菱地所ハウスネット、三井のリハウス、小田急不動産、野村不動産ソリューションズ |
すまいValueは、不動産仲介を行う不動産会社のなかでも特に大手といえる6社が共同で運営を行う不動産一括査定サイトです。
東急リバブル、住友不動産販売、三菱地所ハウスネット、三井のリハウス、小田急不動産、野村不動産ソリューションズ(野村の仲介+)が参加しており、一括で査定を依頼することができます。
すまいValueにしか参加していない不動産会社もあり、複数の大手不動産会社に同時に査定を依頼できるという唯一無二の特長があるため利用価値が高いサイトだといえるでしょう。
参加不動産会社数の多い他の不動産一括査定サイトと併せて利用するのがおすすめです。
おすすめ3 SUUMO:知名度No.1で安心感も抜群
参加不動産 会社数 |
不明 |
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同時査定依頼可能数 | 不明 |
査定可能不動産 | マンション一室、一戸建て、土地 |
代表的な参加不動産会社 | 野村不動産ソリューションズ、大京穴吹不動産、CENTURY21、京王不動産、東宝ハウスグループなど |
賃貸探しのポータルサイト「SUUMO」は、不動産一括査定サイトも運営しています。
耳なじみのあるサービスだから安心感が違うといえますよね。
SUUMOには大手から中小まで幅広いタイプの不動産会社が参加しており、多くの候補から条件に合う不動産会社を絞り込むことができます。
査定を依頼できる不動産会社に関して、売却実績や営業スタッフの人数などの詳細な情報を確認できるのもうれしいポイントです。
一部地域が取扱対象外となっているのが唯一のデメリットといえますが、売りたい不動産が対象地域にあれば気軽に利用してみると良いでしょう。
おすすめ4 LIFULL HOME’S:参加不動産会社数最多クラス
参加不動産 会社数 |
3,277 |
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同時査定依頼可能数 | 最大10社 |
査定可能不動産 | 一戸建て、土地、マンション、投資用区分マンション、投資用一棟アパート・マンション、倉庫・工場 |
代表的な参加不動産会社 | 三井住友トラスト不動産、三菱UFJ不動産販売、みずほ不動産販売、京王不動産、大成有楽不動産販売など |
HOME’S一括査定は、総掲載物件数No.1の不動産ポータルサイトLIFULL HOME’Sです。
CMなどでHOME’Sの名前を聞いたことがある方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
HOME’S一括査定には全国3,000社を超える不動産会社が参加しています。
他の不動産一括査定サイトでは不動産会社を見つけられなかった場合でもHOME’S一括査定なら条件に合った不動産会社を見つけやすいでしょう。
また、ユーザーが安心して利用できるような配慮があるのもうれしいポイントです。
参加できる不動産会社はHOME’Sが設けた独自の基準をクリアしている会社のみとなっており、個人情報の取り扱いも徹底しているため安心して利用できます。
HOME’S一括査定なら相性の良い不動産会社を選びやすいでしょう。
おすすめ5 イエウール:地方の物件を売りたい方におすすめ
運営会社 | Speee |
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参加不動産 会社数 |
1,974社以上 |
同時査定依頼可能数 | 最大6社 |
イエウールは全国1,900社を超える不動産会社が参加している不動産一括査定サイトです。
大手不動産会社だけでなく、日本全国の幅広いタイプの不動産会社に一括査定を依頼できるのがイエウールの最大の強みだといえるでしょう。
また地域の傾向を熟知している不動産会社や専門性に特化した不動産会社も多く、独自の顧客を抱えているケースもあるため高額での売却が実現する可能性も高いといえます。
他の一括査定サイトでは不動産会社を見つけられなかったという物件でも、イエウールなら条件にぴったりの不動産会社が見つけられるかもしれません。
特に地方の借地権の売却を考えている方にはイエウールがおすすめです。
7.まとめ
借地権の種類には「地上権」と「賃借権」があり、借地人が持つ権利の強さはそれぞれ異なります。
地上権であれば所有権と同様に自由に売却できますが、借地権の種類が賃借権であれば売却するために地主の承諾を得なければなりません。
なお借地権の売却方法には以下の四つがあります。
- ・借地権を地主に売却する
- ・借地権を第三者に売却する
- ・等価交換を行い所有権にして第三者に売却する
- ・地主と協力して借地権と底地権を第三者に売却する
借地権を売却する際には、地主が買い受けを申し出ることも少なくありません。
また第三者に売却する場合にも、地主の協力を得られれば等価交換して所有権として売却したり、地主と土地の権利を同時に売却したりすることもできます。
借地権の取り扱いは通常の不動産に比べて複雑であるため、売却を成功させるためには知識と経験のある不動産会社を見つけることが重要です。
無料で使える不動産一括査定サイトを活用して条件の合う不動産会社を絞り込み、信頼できる1社を見つけましょう。
1分で無料査定を依頼できます
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