マンションの大規模修繕はどのタイミングで実施? 費用はどれくらい?
分譲マンションは築年数が10年を経過してくると、外見的な劣化が顕れてきます。そのため、国土交通省は築12年を目安に1回目の大規模修繕を推奨しています。
人間と同じように建物も年を重ねることによって劣化していくのは仕方のないことですが、劣化をそのままにしておいては、不動産の価値はもちろん、生活にも大きな影響を及ぼします。これからマンションの購入を検討されている方も、すでにマンションを購入された方も、大規模修繕についてしっかりと理解しておきましょう。
福留 正明
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1.マンションの大規模修繕はなぜ必要か
マンションなどの建物も、人間と同様に年を取ることで様々な不具合が生じます。ご自身の身体を定期的にメンテナンスするように、マンションなどの建物も定期的にメンテナンスを行うことで、資産としての価値や美観などを維持することが出来ます。
1-1.経年劣化によって考えられる問題点
経年劣化が顕著に表れる部分は、外壁や屋根など屋外にさらされている箇所と言えます。
ひび割れや塗装の劣化、防水処理の劣化などにより、外壁や屋根から雨水などが浸水する可能性も高くなります。
また、外に設置されている手すり等は錆などの腐食により、美観が損なわれるだけではなく、損壊してしまう恐れもあります。
経年劣化による問題点は、外から見てわかる部分だけではありません。給水管や排水管など、外から見ることのできない部分も、築年数の経過とともに、傷んだり、詰まりやすくなるなどの問題が起こります。
1-2.修繕を行わないことによって考えられる問題点
修繕を行わずにそのままの状態にしておくと、住人が減ってしまうというリスクがあります。どんどん劣化していくマンションよりも、綺麗な状態のマンションに住みたいと思うのは不思議なことではありません。
定期的にしっかりとメンテナンスを行わないままにしてしまうと、いざ修繕が必要となった時に、想定以上に費用が必要となり、修繕費を確保することが難しい状態になってしまうことも考えられます。
その結果、入居者が少なくなる、家賃を下げざるを得なくなるなど、悪循環に陥ってしまう可能性も考えられるのです。
1-3.戸建て不動産とマンションでの大規模修繕の違い
戸建て不動産も定期的に修繕は必要になりますが、マンションとの大きな違いは工事にかかる期間と費用が挙げられます。マンションの場合には、戸数など建物の大きさによって異なりますが、戸建て不動産よりも範囲が広いため、工期や費用が大きくなることが考えられます。
しかし、木造の戸建ての場合には耐用年数が短くなるため、マンションよりも短い間隔で修繕を行う必要があります。
2.大規模修繕を実施するタイミング、実施期間と費用について
国土交通省では築12年を目安に1回目の大規模修繕を推奨しています。マンションの建築方法や使用されている資材、立地条件等によって異なりますが、屋根・外壁・共有部・給排水管の補修や交換の目安は下記の通りとなります。
これらの目安をもとに、修繕計画を作成しておきましょう。また、日ごろからご自身で外壁などの劣化を確認しておくことも大切です。外壁のひび割れや鉄部の錆、タイルの剥がれなどの早期発見に繋がります。
2-1.大規模修繕にかかる期間
大規模修繕を実施する場合、どの程度の工事を行うかなどの内容によって期間は大きく異なりますが、50戸以下の小規模マンションの場合には、おおよそ2~3ヶ月程度かかることになります。
また、着工までの準備期間を考えるとおおよそ1~2年の期間が必要です。
修繕工事は足場を組んで行う大がかりな工事となります。マンションに居住されている方はもちろんのこと、近隣の方への配慮なども必要です。
2-2.大規模修繕にかかるおおよその費用
大規模修繕を行う場合、工事期間や費用がどれくらいかかるのかという点も気になる部分です。
大規模修繕にかかる費用は1回目がおおよそ100万円(一戸あたり)と言われているようです。
例えば20戸のマンションの場合、2,000万円ほどの費用がかかることになります。また、1回目の大規模修繕よりも2回目以降の方が費用は高くなる傾向にあります。
高額な費用が発生するため、計画的に資金を確保しておくことが大切です。大規模修繕のための費用は積立という形で入居者の方から集金することになりますが、積立金だけで不足しそうな場合には金融機関等からの融資を検討する必要があります。特に、2回目以降の大規模修繕では積立金で賄いきれない可能性が高くなるため、資金繰りの計画もきちんと検討しておきましょう。
3.大規模修繕の3つの発注パターン
大規模修繕の基本的な流れは検査(診断)を行い、工事方法を決め、着工するという流れです。
この3つの流れをすべて管理会社に任せてしまう「管理会社発注」と、工事業者に任せてしまう「責任施工」、コンサルタントと工事業者に依頼する「設計監理」の3つのパターンがあります。
それぞれにメリット・デメリットがありますので、進めやすい方法を検討するようにしましょう。
3-1.すべて管理会社に任せる「管理会社発注」方式
管理会社発注方式は、検査から工事までをすべて管理会社に任せてしまうという方法です。大規模修繕では一般的な方法と言われています。管理会社との関係が良好であれば、信頼できる担当者にすべて任せることができるため、管理組合の負担も少なく、工事が終了したあとの不具合等も管理会社に確認することができるというメリットがあります。一方で、工事会社の選定などはすべて管理会社が行うことになるため、費用が割高になってしまう可能性があるなどのデメリットも考えられます。
3-2.すべて工事業者に任せる「責任施工」方式
管理組合で決定した工事業者に、検査から工事までをすべて任せてしまうという方法です。責任施工方式の場合には、依頼する工事業者の選定は管理組合が行うことが出来ます。また、複数社を比較することもできるため、費用も抑えることが可能となります。
良い業者を判断することが難しいという点と、あくまでも工事業者さんなので、マンションの管理については詳しくないことが多いという点などのデメリットも考えられます。
3-3.コンサルタントと工事業者に依頼する「設計監理」方式
設計監理方式は、設計施工分離方式という呼ばれ方をすることもあります。この方法は、検査と工事方法の設計については外部の専門家に依頼し、修繕工事は管理組合で選定した業者に依頼するという方法です。
設計監理方式のメリットは検査や工事方法を中立な立場の専門家に対応してもらうことが出来るという点です。
また、修繕工事を依頼する業者を選ぶポイントなどのアドバイスも受けることが出来ます。
ただし、専門家に支払う費用と工事会社に支払う費用がかかるため、責任施工方式と比較すると金額が高くなります。また、工事完了後に問題が発生した場合、専門家と工事業者のどちらに問い合わせるかなどが明確になりづらい傾向があるなどのデメリットも考えられます。
4.大規模修繕で押さえておくべき注意事項
4-1.知人等からの紹介で工事業者を選ばない
管理会社発注方式以外の方法で大規模修繕を行う場合、工事業者は管理組合が選定することになります。
知人や近隣の方などから紹介されるというケースもありますが、縁故関係のある方に依頼すると、問題が起こった時に、紹介者の方が責任を感じてしまう可能性も考えられます。「せっかく紹介してくれたのだから」という気持ちもわかりますが、万が一のことを考えなるべく避けておいた方が良いと言えます。
4-2.安いだけでの判断はしない
大規模修繕にはそれなりの費用がかかるため金額が低い業者を選びがちですが、最初にご説明したように、大規模修繕はマンションの美観や資産価値を維持するために必要な工事です。
金額が低いために、手抜き工事をされてしまったとなっては本末転倒です。また、金額が低いという理由で依頼したら、その後業者が倒産してしまい不具合等のサポートを受けることができなかったというケースも存在します。そのようなことの無いように、依頼先を決める際には金額以外の面でも検討する必要があります。
4-3.施行中に起こりうることを想定しておく
大規模修繕では、工事の音や臭いに関するクレームが想定されます。とくに初めての大規模修繕の場合には、マンションにお住まいの方からもクレームが上がることもあります。
施行中に起こり得ることを想定し、事前にしっかりとマンションにお住まいの方、近隣の方への説明を行いましょう。
4-4.工事中の確認等もしっかりと行う
工事が完了した際にチェックすることは当たり前ですが、工事中も進行状況などをしっかりと確認しましょう。
スケジュールが伸びてしまう、検査だけでは判断できない不具合が発見されるなど、追加で費用が発生する可能性も十分に考えられます。円滑に大規模修繕を進めるためには、工事中のチェックも重要になります。
5.まとめ
マンションであっても不動産はご自身の大切な資産となります。資産価値を大きく下げることの無いように、定期的にきちんと修繕をし、価値のある状態を維持することが大切です。修繕計画はこまめに見直し、最新の計画に更新していくようにしましょう。また、大規模修繕は費用も大きくかかるため積立などによる資金確保が重要ですが、積立金だけで賄うことが難しいケースが多いです。修繕計画と同時に資金繰りに関する計画もしっかりと検討しておきましょう。
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