30代で住宅ローンを組む際の注意点、審査のポイント、完済のコツは?

「住宅ローンを組みたいけど、年収はいくら必要なんだろう……」

「今の年収だとどれくらい融資を受けられるのかな?」

30代で住宅ローンを組むことを考えている方の多くがこうした疑問をお持ちなのではないでしょうか。

この記事では30代で住宅ローンを組む際の基礎知識や注意点を徹底解説していきます。

不動産のプロ
審査を受ける際のポイントや、完済のために心掛けるべきことについてもご説明していきますので、ぜひ住宅ローンを組むときの参考になさってください。

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1.30代で住宅ローンの融資を受けるなら年収はいくら必要?返済額の目安は?

住宅ローンを組みたいと検討中の30代の方の多くが気になっているのが、「必要な年収」「返済額の目安」ではないでしょうか。

まずは、住宅ローンの融資を受けるのに必要な年収と返済額の目安についてわかりやすくご説明してきましょう。

1-1.フラット35では年収の6〜7倍の融資を受ける人が多い

それでは、マイホームを購入する人がどの程度の金額の融資を受けているのか確認してみましょう。

住宅金融公庫が運営を行っているフラット35では、融資を受けた方へのアンケートを実施しています。

そのアンケート調査結果によれば、注文住宅を購入する人の融資額は年収の7倍程度となっています。

また、新築マンションを購入する人の場合も融資額は年収の7倍程度です。

中古住宅であれば多少価格が安くなるので、年収の6倍程度となっています。

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住宅の購入に際し、年収の6倍から7倍の金額の融資を受ける人が多いことが分かりますね。

1-2.自己資金は1,000万円程度あればOK

次に、実際に家を購入する際の資金計画について考えてみましょう。

年収400万円の方が3,500万円の家を購入したいと思った場合、年収の7倍の融資を受けることを前提に逆算すると、2,800万円の住宅ローンを借り入れることになるはずです。

つまり、不足分の700万円を用意できれば3,500万円の住宅が購入できます

年収や購入する物件の価格によって当然借り入れ額は前後しますが、おおむね1,000万円程度あれば充分だといえるでしょう。

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自己資金を1,000万円も用意できないという方もいるかもしれませんが、そのような場合は親や祖父母など直系尊属からの住宅資金贈与制度を利用すれば、非課税で最大で3,000万円までの贈与が受けられます。

条件によって非課税になる額の上限は次のように変わってきます。

消費税率の区分 契約締結日 省エネ等住宅 一般の住宅
家屋に対する消費税率が
8%の場合など(※)
~2015年末 1,500万円 1,000万円
2016年1月~2020年3月 1,200万円 700万円
2020年4月~2021年3月 1,000万円 500万円
2021年4月~12月 800万円 300万円
家屋に対する消費税率が
10%の場合
2019年4月~2020年3月 3,000万円 2,500万円
2020年4月~2021年3月 1,500万円 1,000万円
2021年4月~12月 1,200万円 700万円
※個人同士の売買で消費税がかからない場合や、土地だけを購入した場合も含みます。

自己資金が500万円程度でしたら、融資の金額は3,300万になってしまうので、年収500万円程度は必要でしょう。

自己資金をどれくらい用意できるかによって予算計画は大きく変わってきます。

それでも年収400万円あれば、十分現実的なプランを立てて自宅を購入できるでしょう。

1-3.返済期間を長くすることで、毎月の負担額を減らそう

30代の方なら住宅ローンの返済期間は最長で35年に設定することができます。

返済期間をできるだけ長く設定することで、毎月の負担を減らしましょう。

もちろん、月々の負担を減らすためには、なるべく低い金利の住宅ローンを借り入れることも重要です。

メモ
低金利で特典も充実したおすすめの住宅ローンはこちらの記事で詳しくご紹介しています。

1-4.住宅ローン減税も忘れずに

3,000万円程度の住宅ローンの融資を受けるのであれば、住宅ローン減税制度を利用すれば毎年ローン残高の1%の金額を節税できます

メモ
住宅ローン減税が受けられるのは従来ローン借入後10年間でしたが、2019年から13年に延長されました。

住宅ローン減税制度(住宅借入金等特別控除)について詳しくはこちらをご覧ください。

住宅ローン減税を活用すれば、1.5%の金利で融資を受けたとしても実際の金利はそこから1%マイナスされた数字、つまり0.5%と考えることもできます。

注意
住宅ローン減税はあくまで住民税と所得税から返還されるため、これらの税金の納付額が多くない方にはあまり影響がありません
不動産のプロ
住宅ローン減税についても念頭に置いて、毎月どの程度の額なら負担できるのかを検討しましょう。

2.30代で受ける住宅ローン審査の注意点

30代になって家庭を持ち、子供を作ろうと考えるようになれば、二人で住んでいた賃貸住宅も手狭になり、いよいよマンションもしくは戸建て住宅を購入したいと考える方も多いでしょう。

30代で住宅ローンの融資を受けるのであれば年齢自体がリスクになることはほぼありません

ただし、よく注意しておかないと、自分が想定した金額や条件で融資が受けられないこともあります

30代で住宅ローン融資の審査を受ける場合、どんなところに気を付ければいいの?
不動産のプロ
お任せください! これから絶対に知っておくべき4つの注意点について解説していきます。

注意点1 30代前半と30代後半で住宅ローン返済の目処は変わってくる

30代で住宅ローンの審査は、30代前半と30代後半で大きく意味合いが変わってきます

今は60歳で定年退職をしても5年間、65歳までの雇用延長が可能です。

そのため65歳まで希望すれば働くことができます。

30代前半であれば、35年ローンを組んだとしても少しの繰り上げ返済を含め65歳の退職時に住宅ローンを完済できるでしょう。

しかし、30代後半では完済が70歳過ぎになってしまいます。

そうすると収入もなくなり、年金でローンを返済しなければいけません。

同じ30代でも30代前半か後半かによって状況が大きく変わってくるんですね。

注意点2 転職したての人は審査で不利になることも

かつては定年までの雇用が一般的だった日本ですが、今では人材の流動化も進み、35歳以上での転職も当たり前になっています。

大卒の正社員でも就職後から3年以内に30%が転職をするといわれており、30代の人では転職をしたことがないという人の方が少ないかもしれません。

実は住宅ローンの審査の際は転職歴が見られることがあります。

転職してから1年を超えていれば審査に不利に働くことはほとんどありませんが、今の会社に就職してから1年未満だと審査において不利になる可能性があるといわれています。

その会社をすぐに辞めてしまうというリスクがあると捉えられてしまうのです。

収入の良い会社に転職できたのでさっそく住宅ローンの融資を受けようと考えても、実際には融資の審査が通らないことがあるので注意してくださいね。

不動産のプロ
転職した方は、転職後一年が経過してから住宅ローンの融資を申し込むと良いでしょう。

注意点3 未返済のローンや契約がないか要注意

住宅ローン審査の前には未返済のローンなどがないか充分に確認するようにしましょう。

審査では、毎月の返済が他にないか、またこれまでクレジットカードや携帯電話料金などの支払いを滞納したことがないかなどの信用情報が重点的にチェックされます。

車のローンやその他毎月払っているローンがある人は、全て返済してから住宅ローンの審査を申し込みましょう

またクレジットカードの滞納履歴があった場合は信用情報が回復するまである程度の時間が必要です。

その場合、1~2年程度は住宅ローンを組むことは延期し、自己資金を貯めておきましょう。

注意点4 返済負担率を上げすぎない

融資を受ける際に注意しておきたいのは返済負担率を上げすぎては危険だということです。

返済負担率とは
年収に占める年間の住宅ローン返済額の割合のことをいいます。一般的には30~35%が標準だといわれています。

現在は年齢に応じて収入が自動的に増える会社は少なく、20代から30代は収入が伸びていても、30代から40代、40代から50代になるとき、皆収入が上がるわけではありません。

リスクを抑えたいと考えるのであれば現在の収入が60歳まで伸びないとしても無理なく返済できる住宅ローンの返済計画を立てていきましょう。

金融機関側も30代の収入は今後伸びしろが大きくないものと見なすことがあります。

収入に不安がある場合、返済負担率はできるだけ25%以下に抑えられると安心です。

注意
交渉次第では返済負担率が高くても融資してくれる銀行もあります。ローン審査に不安がある方は、交渉の余地のある金融機関を選ぶ必要があります。

3.30代が定年前に住宅ローンを完済するためのコツは?

「30代で住宅ローンを借りて、定年退職前に完済できるの?」

と気になっている方は多いでしょう。

しかし、返済を急いだ結果、経済的な余裕がなくなってしまうケースも少なくはありません。

不動産のプロ
そこで、ここからは無理なく、計画的に定年前に住宅ローンを完済するために必要な準備と返済計画の立て方のコツを伝授します!

コツ1 住宅ローンの自己資金は2割ほど用意する

まずできるだけ自己資金を多く用意しておくことが重要です。

自己資金を多く用意しておけば借りる金額自体が少なくて済みますし、有利な条件で融資を受けやすくなります。

注意
自己資金0円の状態で住宅を購入するとなると、毎月の返済額も増え、35年をかけても返済が難しい可能性があります。

コツ2 完済のために親からの贈与もできるだけ使う

自己資金が重要なことはわかっていても、なかなか準備できないという方は多いでしょう。

その場合まず利用したいのが親族からの住宅取得資金贈与制度です。

通常、年間110万円を超える贈与は課税対象となりますが、住宅取得資金に関してのみ条件によっては最大2,500万円まで両親及び祖父母からの贈与は非課税となります。

メモ
住宅取得資金贈与制度非課税枠について詳しくは「1-2.自己資金は1,000万円程度あればOK」をご確認ください。

親族の資産に余裕があるのであれば積極的に住宅資金の提供を受けると良いでしょう。

贈与枠以上に資金を調達したいのであれば、住宅購入資金を借りるという名目で借用書を作成し、親からお金を借りましょう

全くの無利子での貸与は贈与とみなされてしまいますが、金利や期限を設定して、いつまでに返済を行うといった借用書を作成しておけば、贈与にはあたりません

親に頼ることで、住宅ローンの融資を受けるよりも安い金利で住宅資金購入用資金を調達できるでしょう。

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コツ3 住宅ローン繰り上げ返済では期間を短縮できるプランを利用する

不動産のプロ
効率的に住宅ローンを返済するためには繰り上げ返済を積極的に行っていくことが重要です。

繰り上げ返済をする際には、以下の二つのプランを選ぶことができます。

  • (1)毎月の返済額を減らす
    (2)返済期間を短縮する

定年退職前に返済が終わらせたいのであれば、返済期間を短縮するプランを選択しましょう。

実際に総支払額を比較してみるとわかりますが、返済掲載期間を短縮した方が、毎月の返済額を減らした時より総支払額が減る可能性が高くなっています。

また、融資を受ける金融機関は無料で繰り上げ返済が自由に行えるところを選びましょう。

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繰り上げ返済については以下の記事を参考にして下さい。
住宅ローンの繰り上げ返済がお得な理由を解説!デメリットはない?

コツ4 住宅ローンを組んだタイミングで生命保険の見直しをする

住宅ローンを利用すれば団体信用生命保険に加入ができるので、死亡時に遺族に住宅に関わる負債を残す心配がありません

そこで、少しでも家計の負担を減らすためにおすすめな方法が生命保険の見直しです。

団体信用生命保険(団信)とは
住宅ローンを借りる際、多くの金融機関では加入が必須となっている生命保険の一種。団信に加入しておけば、債務者が死亡あるいは高度障害の状態に陥った場合にローンの返済が免除されます。

団信と重複しているような生命保険を解約すれば、保険料を節約することができます。

注意
ただし、必要な保険まで解約しないよう慎重になる必要があります。医療保険やがん保険などの加入は、ご自身の状況にあわせて検討するようにしましょう。
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団信については以下の記事を参考にして下さい。
住宅ローンを組めば生命保険はいらない?団信とフラット35を解説

4.まとめ

30代で家を購入する際には、何年で返済するのか、月々いくらの支払いであれば続けていくことができるのか、きちんと計算しておくことが重要です。

また、30代前半と30後半では借りることができるローンの金額や条件に差が出る可能性もあります。

今後のライフスタイルや資金計画を慎重に考える必要がありそうですね。
不動産のプロ
その心構えなら問題ないでしょう。この記事でご紹介した注意点やコツを踏まえて、憧れのマイホーム購入を検討してみてくださいね。